PROJECT01 山と人

山と人、山と山を繋ぐ。 佐賀県の新たな魅力を山頂から発信する “低山トレッキングガイド見習い”。

佐賀県庁 さが創生推進課
自発の地域づくり担当
係長 中村美和さん
主事 上滝寛記さん

取材・文:いわたてただすけ

PROJECT 1

今日から職場は、山。山で人と出会うこと。山で見つけた感動を記録すること。自分がなぜ、こんなにも山が好きなのかを誰かに伝え共感を生むこと。そんな楽しい毎日を過ごすことが仕事になるだなんて、まぁちょっと信じがたいですけれども、今回は、佐賀県庁さが創生推進課が「山をこよなく愛する」人を「低山トレッキングガイド見習い」の地域おこし協力隊として募集しています。

活躍のフィールドは、佐賀県全域の山。天山、多良岳、金立山、黒髪山、九千部山…。こうした500~1,000メートル前後の低山を自由自在に登り降りして、山頂から麓から、魅力発信につとめていただける方はいませんか。情報を届けたい相手は特に、山の初心者。なんとなく興味がある方、今まさに初めての山登りを検討している方に、山の楽しさ、佐賀の山ならではのことがちゃんと伝わるといいなと思います。山に人が増えれば、山は元気になります。山が元気になれば、人も元気をもらえます。山から始まる佐賀県の魅力づくり。地方創生の新たな挑戦に、ぜひ、あなたのお力を貸してください。

低山にしかできないことがある

山の仕事にもいろいろありますが、なぜ、今回の地域おこし協力隊では、トレッキングガイド見習いを募集するのでしょうか。県の担当職員として、地域おこし協力隊と3年間の活動をともにする、中村さんと上滝さんに話を聞いてみました。

中村さん(以下、中村) トレッキングとは、低山を登ること。気軽な山歩きのニュアンスです。山に馴染みがない人たちにも新しく関心をもっていただいて、人と山とが触れ合う機会を増やしていくために「まずは一度、低山に登ってみる」という体験を応援できたらと考えました。佐賀県内の山々には、池田さんのように山を守る方、山を楽しみたい人をガイドしてくれる団体もありますが、今回は佐賀県庁として地域おこし協力隊を募集するので、ちょっと欲張りだけど、県内全体で活動して、県内の山々を幅広く見渡しながら、山と人だけでなく、山と山とを繋ぐような活動をしてくれる方に来ていただけると嬉しいです。

上滝さん(以下、上滝) 期待するのは、地元の人たちの知識や知恵を継承しながらも、プラスアルファで地元の人が気づかない山の魅力を発見すること。その魅力をたくさんの方、特に山登り初心者の方にも届くよう情報発信をしていくことです。担当の中村と上滝は県内出身者。ですから外の目、外から来てくれた人ならではの感覚を発揮して、まだ誰も言語化できていなかった「佐賀の山の新たな一面」を表現したり、一緒につくりあげていただきたいですね。

担当の上滝さん。趣味は駅伝。お昼休みには毎日かかさず走り込みに行くとか。

佐賀県の山の魅力、特徴は何でしょうか。日本全国、いえ世界中にもたくさんの山がある中で、佐賀のお山を仕事にすることがなぜ楽しいのか。おふたりはその分析もされています。

中村 まずは近いこと。佐賀市内からすぐ近くに天山という標高1,046メートルの山があります。山頂に一番近い九合目の駐車場まで、車で30分。そこから山頂まで徒歩30分。たったの1時間で素晴らしい景色が楽しめます。他にも多良岳、金立山、黒髪山、九千部山など、それぞれ市街地や住宅地との距離感の近い山が多く、都会に住むよりも「山が身近」にある生活を楽しめると思います。出勤前に「ちょっとひと登り」する人もいるようです。

上滝 自分はまだ登山初心者なので多良岳しか登ったことがありませんが…池田さんに案内していただいて、山の歴史を聞いた時にビビッときました。山の歴史を知れば、見える景色に意味や深みが加わって感じることができます。池田さんは、この木に抱きつくと宝くじが当たるよ(笑)とか、この木の実は食べられるよ、この木の皮を削ったらツンとした匂いがするよ、これがサロンパスの材料だよ…と歩く多良岳図鑑のようで、「へぇ~」と「なるほど」が延々と続いて、ほんとうに楽しいんです。やっぱり、ガイドしてくれる人がいることで一層、山の魅力が伝わると思うんです。まずはこれを体験していただいて、そこで得た感動をさらにたくさんの人に広げていただけるといいなと思います。

中村 佐賀県の山は比較的、標高が低いとも言われます。一番高いのが経ヶ岳の1,076メートル。初心者にも親しみやすい、トレッキングに適したサイズ感の山が多いんです。ですから小さいお子さまから高齢の方まで幅広い年齢層の人が登っていますね。それに、低山なのに、景色はすごくよく見えるんです。他の地域の山を登ってきても、やっぱり佐賀の山から見える景色が好きです。平地が広がっていて、視界をさえぎるものがないからでしょうか。佐賀県はアジア最大級の「バルーンフェスタ」でも有名で、空が広い県としても知られています。佐賀の山から見える景色は、標高以上に素晴らしいものがあると思います。山道を抜けて、汗をかきながら歩いて、その先に待っている山頂からの景色が私は何より楽しみです。この山はこの季節、この景色が素敵。というのを心のメモリーに保存していくこと。そして美しい景色の中で、シンプルな塩にぎりと達成感を噛み締めることが、私流の山の楽しみ方です。

担当の中村さん。登山が好きで冬以外は月に1度は山に登るそう。登ったときのお弁当とコーヒーがたのしみ。

上滝 低山だからできること、というのはあると思います。多良岳の山頂で今度、コーヒーとお茶を美味しく淹れるイベントが、開催される予定です。バリスタの方、茶師の方、農家の方を招いたりして「山頂」での楽しみ方が広がっていくと、佐賀県の山にしかない新しい魅力を提案できるんじゃないかと思います。一口に、登山、と言うと標高が高い山に人気が集まるということはありますが、逆転の発想で、身近だからできること、低山にしかない価値を一緒に想像してくれたら楽しいなぁ。

いろんな山に登ること。高い山を目指すこと。山の楽しみ方は人によって様々ですが、低山だからできること。これを考えるのは、なかなか刺激的な挑戦になりそうな予感がします。

山を愛する人たちが繋がって、愛すべき山々の未来を育てられたら

「山と人」の地域おこし協力隊としての主な業務は、次のとおり。

①低山トレッキングコースの探索、ガイドのための山にまつわる植生や伝説、歴史等の魅力の調査
②キーパーソンとの関係づくり
③低山登山やトレッキング等のアクティビティイベントのサポート及び企画実施
④余裕があれば①~③にまつわることや、県内の山における植生の記録、魅力を伝える情報発信

キーワードは、探索、調査、関係づくり、企画実施、情報発信。いかがでしょうか、難しそうでしょうか。むしろ山が好きで、普段から山に出入りしている人であれば、無意識に楽しんでいることかもしれません。さらにもう少し、「どんな人に来て欲しいか」のイメージを県庁のおふたりからいただきました。

中村 私が考えるのは、おじいちゃんおばあちゃんたちから喜んで学べる人、人懐っこい人。山 を守り、山の知識や知恵を繋いで来られた方々は、やはりご年配になっている場合が多いです。ですから、そういう方々の思いや、話しておきたいこと、伝えておきたいことを素通りするのではなく、おもしろいなと感じて聞いてくれたらいいなと思います。放っておいたら消えてしまう文化、途絶えてしまう大切な歴史を、失わないように動いてもらえるとありがたいです。私自身は、歴史は苦手ですけど(笑)!

上滝 一番は、「山をこよなく愛する人」ですよね。やっぱり山に登らないとできないことが、たくさんある仕事です。着任したら、少なくとも月に2〜3回は、どこかしらの山を登ることになると思います。もしかしたら、山頂でミーティング、山頂からオンラインミーティングなんてこと もしてみたい。ですから、それが苦にならないくらいは山が好きでいてほしいですね。もちろん「逆に毎日登りたい!」と、そこまでの愛がある方も歓迎です。

中村 私たちが所属している「さが創生推進課」は、基本は外に出て仕事をするんですよ。人に会って話をしないと、仕事が進まないような課なので。全員外に出てしまって、誰が電話をとるの? という状態の時もあります(笑)。今回募集する地域おこし協力隊の方にも、県庁の私たちの課に席は用意させていただくんですけど、できれば外に出ていただきたいです。山で人と会う。そこで教えてもらった景色を見に行く。気になる歴史を図書館の文献で調査する。そういう風に自分で考えながら自由に動くという資質が大切かもしれません。もちろん「今日は何をするのか」「何をしたのか」という共有はしてもらうんでしょうけど、週に一度、県庁に来てレポートを出せば、フリーに動いていただいて直行直帰でもOKです。Instagramの更新が活動報告になっている、みたいな状態でもおもしろいかもしれませんね。もちろん、着任してすぐは、山々のキーマンの紹介も兼ねて、私たちが一緒に行動して、サポートします!

上滝 募集要項にもある通り、3年目は1〜2年目の活動で繋がった人脈を有効活用しながら 独自企画で動いていただきたいと考えています。地域の学校とコラボして体験学習の場を作ってもいいし、同時に課内で募集している山菜料理人見習いの方と合同の企画を 考案することもできます。

山の魅力、山の可能性を活かすことで、教育も食も歴史も、すべての領域を繋げ、やりがいのある仕事が発想できそうです。佐賀県内全域を山頂から見渡して、自由な発想で、能力や情熱を発揮してください。山をこよなく愛するあなたの、ご応募をお待ちしております。

取材・文:いわたてただすけ

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