2022
PROJECT01 | 山と人 隊員活動レポート
佐賀にはトレッキング初心者にもおすすめしたい低山や里山がたくさんあります。「低山トレッキングガイド見習い」は、そんな佐賀の山に登り、学びながらその魅力を伝えることで佐賀の山々のファンを増やす仕事です。
元々登山ガイドの仕事もしていた天野さん。2021年12月に着任してからの9か月は「忙しかったけど、楽しかった!」と、ほがらかな笑顔。天野さんは、佐賀の山でどんな人たちに出会いどんな活動をしてきたのでしょうか?
天野さん(以下、天野) この9か月は、とにかくいろんな人に会って、見聞を深めさせてもらいました。県内のキーパーソンと仲良くしてもらいつつ、勉強させてもらいながら、実践をする日々でした。「多良岳を愛する会」では僕自身も会に入会して、毎月のようにイベントを主催者側として一緒に開催しています。何班かに分かれて多良岳を案内しながら登るのですが、班長として僕も1班を任せてもらっています。どんな風に案内しよう? 何を話そう? とか、色々組み立てて実践しています。
天野 他にも「天山の自然を守る会」で開催している月1のモニタリングにも参加しています。毎月どんな植物を見ることができるのかチェックしながら、花のことなどを先輩たちに教えてもらい、少しずつ独自のデータベースも作っています。
黒髪山やみやき町の里山など本当に佐賀県内のあちこちの山と人をまわらせてもらっています。登山はもちろんですが、マウンテンバイクを含めたレジャートライアスロンなど山に関わる全般のことも学ばせてもらっていて、本当に充実した日々です。「佐賀アウトドアガイドクラブ」や「SAGASOW」にもお世話になっています。
今までのガイドとしての経験で培った引き出しの深さや、話し上手な性格からか、天野さんはどこの山でもひっぱりだこのようです。中学生や高校生のための登山教室も担当しているとか。初めての経験も、なんだか楽しそうです。
天野 春に太良高校の学校登山があって。事前学習の時間と実際に1日山を案内するのを担当しました。事前学習の時間では、「こんなものを当日は持ってきてね」とか、パワーポイントの資料を使って説明しました。
今までもガイドの活動はしてきたけど、こども向けっていうのは初めてでした。何より新鮮だったのは、完全に登山に興味がない人と山に登るっていうのが初めての経験だったことです。山なんて初めてだし、登りたいとも思っていない、という人が大多数の中で、いかに楽しんでもらうか? というのが、とても新鮮で面白かったです。もちろん大変でもありましたけど(笑)。
天野 魅力を伝えることと、ケガ無く安全に帰ること、この両立が難しいですね。一緒に登る時は、あえて前半はあまりガイドしないようにしています。まずは「友達と山に登って楽しかったな」という思い出を作ってもらう。そのうえで、「楽しい人が先頭を歩いてガイドしてくれていたな」という思い出になってくれたらいいなと思いながらガイドをしています。
あまり知られていないかもしれないですが「学校登山=山嫌い製造機」みたいなところがあります。学校登山ではちゃんとしたガイドを依頼しないことが多いのが現状です。ただでさえ山に登りたくない人に、ちゃんと指導する人がいないまま、苦しい登山をさせちゃうと本当に山の事が嫌いになってしまう。しっかりガイドできる人と学校をつなげていくことで、こどもたちが山を好きになるきっかけを作りながらガイドの仕事も作っていけたら良いですよね。
天野さんは山をガイドするだけでなく、登山道の整備にも興味があるそうです。ガイドと登山道の整備、一見違うことのようにも感じますが、登る人だからこそ感じることがあるようです。
天野 山梨県や北海道では登山道整備の団体が立ち上がっています。僕自身もただ山を案内するだけじゃなく、何かを付加価値として付けていくことをやっていきたいと思っています。
今年度は登山道整備の研修にも行かせてもらい、どうしたら道と自然を守っていけるかを学んできました。道が踏み固められて、草が生えなくなると、土がえぐれて窪地になり水路になる。そして、ますます植物が育たない環境になってしまう。木道や石畳にしたり、周りの倒木を使って階段状にしたり、土留めをつくるとか。すこしずつそう言ったこともできたらいいですね。
天野 地元のこどもたちを巻き込んでそういった環境保護につながることをしたり、登山ツアーの中に登山道整備も組み込んだり。山を案内するだけじゃない付加価値を付けていけることをしたいです。 まだまだガイドとして未熟な部分もあるので、知識はもちろん、体力も付けながら続けていきたいと思っています。
佐賀の山々を生き生きと駆けまわる天野さん。佐賀の山の魅力が、今まで届かなかった人にも天野さんの活動を通してどんどん広がりそうです。山と人をつなぐ天野さんのこれからの活躍がますます楽しみです。
取材・文 門脇恵
※この記事は2022年8月取材時点のものです。
(参考リンク)
・箸とピッケル(@hashi.to.pickel)