2022

PROJECT08 | 市民活動と人 隊員活動レポート

防災、子ども、まちづくり。経営者が出会い、協働した佐賀の人々。

野見山茂(のみやましげる)さん | 2022年度

CSO連携型地域おこし協力隊「さがむすび隊」は人と人、人と組織をつなぐことで社会課題の解決を目指すプロジェクトです。
野見山茂さん(以下、野見山さん)は、NPO法人さが市民活動サポートセンター(以下、さがサポ)と連携した「さがむすび隊」として2021年11月に着任しました。社長として、会社を経営してきた経験もある野見山さんは、この1年どのような活動を行ってきたのでしょうか? その様子をご紹介します。

※CSO・・・Civil Society Organizations(市民社会組織)の略。NPO法人や市民活動団体、自治会といった組織・団体を包括的に呼称している。

名刺交換1000枚。専門用語と顔を覚える日々。

にこにこ笑顔が持ち味の野見山さん。1年間、どのような活動をされてきたのでしょうか。

野見山 一言で表すと、まあ楽しかったですね!(笑) いろんなCSOの活動をイチから教えてもらうのが、新鮮でした。慣れないことを乗り越えていくのにも燃えるタイプなので、本当に楽しめたと思います。

CSOと一言で言ってもいろんな団体さんがあります。子育て支援をしている団体もあれば、災害支援、多文化共生、地域づくりなどなど。さがサポの一員として、CSOをお手伝いすることから活動を始めました。この1年はとくに「防災」「子ども」「まちづくり」という、3つの分野の団体から重点的に学ばせていただきました。

この1年の活動を通して確かな手ごたえを感じている野見山さん。娘さんも佐賀を舞台にしたアニメの大ファンということで家族そろって佐賀ぐらしを楽しんでいるそうです。

野見山 はじめは、さがサポの理事長・山田健一郎さん(先駆者記事参照)と一緒に会議に参加するところからスタート。CSOが集まる会議や、経営者で構成される会議など、佐賀中を駆け回る日々。ざっと100近い団体とつながることがり、1000枚以上の名刺を交換しました。顔を覚えるのが大変でしたし、最初は会議中に飛び交う言葉も、専門的でわかりませんでしたよ(笑)。それが、今ではキーパーソンをおおよそ把握できています。

色々な団体さんとつながりができましたが、特に防災の分野の、(一社)佐賀災害支援プラットフォーム(以下、SPF)にお世話になっています。こちらは、被災地支援に取り組む人たちをつなぎ、協力や情報交換を行う団体で、私は事務局スタッフとして関わらせてもらいました。SPFが感じている課題の一つが、災害時のプロ人材の不足です。大規模な災害からの早期復旧には、重機の活用が欠かせないもの。そこで、SPFは2022年から重機の講習制度を始めました。

2021年8月の豪雨被害によって大町町に立ち上がった災害支援拠点。災害救助犬の育成、派遣を行う認定NPO法人日本レスキュー協会の佐賀県支部拠点「MORE WAN」と大町災害支援拠点「soleil」が併設されている。この場所で災害時を想定した訓練なども行っている。

野見山 事務局として私は、講師との調整や資料づくり、会場の受付などを務めています。建設機械の技能講習は、平時でも行われていますが、災害時を想定した講習はより実戦的というか。安全を考えながらも、タブーとされていることやアクロバティックなやり方も取り上げて実施しています。

豪雨災害を経験した佐賀では「平時の備え」が進んでいます。こうした重機の講習制度は、九州ではSPFだけが実施している取り組みです。将来的に、免許制度の構築も目指していくという野見山さんの挑戦は、まだまだ続いていきます。

大町災害支援拠点「soleil」の事務所内に並んだ災害時の写真には、浸水被害の痛ましさとともに人々の結束が記録されています。

現場を理解し再認識した、自分の役割

CSOに寄り添った活動を通して、得られた視点もあるようです。会社経営とは違う市民活動の現場の価値観とはどのようなものなのでしょうか。

野見山 今まで、防災や災害という分野には全く関わることがなかったんです。着任前に起きた佐賀の水害も、起きていることを耳にしただけで、実際にどんなことがあったかはわかりませんでした。当時、私は北九州市で暮らしていたので、佐賀ほど大きな被害は身の回りになかったんです。でも、SPFの方たちは肌身で経験していて、自分の目で現地の様子を見ている。当然、見ていない自分とは差があって、埋めるのが大変だと感じました。それは、今も埋まっていません。

でも一つ、お役に立てたんじゃないかと思えることもありました。行政職員の方が被災者のお宅をまわる訪問調査に、同行したときのことです。そこで、私の前職の会社経営時にしていた訪問販売の経験が活かせました。例えば、不在でもすぐに帰らず、隣のお宅に聞いてみて情報収集したり、物干し場をチェックしたり(笑)。一緒にいた職員の方に「なんでそんなことできるんですか!?」と感動してもらえましたよ。

明るくてよく笑い、空間を前向きなムードにしてくれるお人柄の野見山さん。どんな現場でも重宝されているようです。

野見山 現場に入って感じたのは、災害支援は終わりが難しいなあってことです。例えば、家が元通りになっても、被災された方の心はケアが必要だったりしますよね。災害支援としては完了したように見えても、福祉的な、形を変えた支援が求められると思うんです。行政が通常業務として行っている福祉に、支援してきた内容をつなげるのが難しいんです。そこを雑にやってしまうと、災害支援をしている側はきちんと活動できていないことになるし、行政の福祉担当課も困ってしまいます。受け取りやすいパスを出すって難しいんだなと思いました。

CSOでの活動を通して野見山さんが感じた、災害支援から福祉への橋渡しの重要性。それは、地域の媒介者である地域おこし協力隊が期待される役割そのものです。

CSOと関わることで得た気づきを胸に、次の活動へ。多忙な中、准認定ファンドレイザーの資格も取得したそうです。

「つなぐ」は、マッチングからコーディネートへ

防災の取り組みだけでも、十分な活動実績と言えそうです。しかし、野見山さんは「子ども」や「まちづくり」といった分野でも、献身的に活動してきました。今後、さらに取り組みたいことも多数抱え、意欲的に2年目を見据えています。

野見山 「子ども」の分野では、私が経営者の集まる会議に参加する機会が多いことを活かして、CSOの活動をPRし、支援や参加の声かけをしました。取り組みに賛同してもらい、企業の応援団を増やせたらいいなと思って行動しました。経営者の方は、CSR(企業の社会的責任)に興味を持たれている方も多く、実際にCSOの活動現場を見に来てもらえることもありました。寄附につながったり、子ども食堂に自家製のパンを届けてくれる飲食店が現れたり、新しいご縁がいくつも生まれています。

まちづくりで言えば「佐賀城下栄の国まつり」というイベントの時に、ゴミの分別・回収を呼びかける「ごみダイエット大作戦」の統括を担当させてもらいました。私の仕事は、集まっていただいたボランティアの方たちのマネジメントです。この事業、分別・回収だけでなく、ゴミの持ち帰りを訴える仕掛けもあって、いい事業だなと思いました。好きなお祭りを楽しむ時間はなかったけど、佐賀市や商店街の方から感謝の言葉もいただいて、達成感を得られました。

マネジメント力を発揮した地域のイベントは、大盛況だったそう。

野見山 CSOのニーズは、やっぱり活動資金や人材の部分になると思います。ただ、それは間違いじゃないけれど、決して押し売りは良くないということがわかりました。良かれと思って、あけっぴろげにPRしてもダメ。それよりも、まずは相手の話を聞くことが先なんですよね。いま、相談を受けているCSOに、ふるさと納税にチャレンジしたいところがあります。立ち上げから寄附がいただけるようになるまで、伴走していきたいと考えています。

一言で「つなぐ」と言っても、誰と誰を会わせた、というマッチングは、活動の本懐じゃないんです。求められているのは、コーディネートすること。そのためには、もっと深く絡んでいって、必要なところとおつなぎできる存在にならなければ、と思っています。

活動2年目に差し掛かった野見山さんの視点は、一段階も二段階も向上していました。経営者の嗅覚はそのままに、どんどん視野が広がっていく様子が伝わってきます。取材時、偶然居合わせた奥様も「会社をしていた頃、どうやったら儲かるかを話していた人が、今は、どうしたら助けてあげられるか。そればっかりです」とコメント。

次に経営するのは、会社でしょうか、それとも……。野見山さんの活動にご注目ください。

取材・文 橋本高志
※この記事は2022年10月取材時点のものとなります。

ご自身は「諸先輩と差が埋まらない」と話しますが、活動を通してだんだん近しい存在になりつつあるように思えました。

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