PROJECT02 里と人

佐賀まるごとがあなたのキッチン! 里山と人をつなぐ“山菜料理人見習い”

佐賀県庁 さが創生推進課
自発の地域づくり担当
係長 中村美和さん

取材・文:池田愛子

PROJECT 2

早春の山菜の柔らかな新芽をてんぷらにしてお塩だけでいただいたり、イノシシと先を争いながら筍を見つけたり、里山の四季を感じつつ、旬のものをいただく幸せは、何ものにも代えがたい豊かな時間につながっています。
菖蒲ご膳のように「山の恵み」を活かすには、先人の知恵や山菜に関する知識が欠かせません。佐賀県庁のさが創生推進課ではそんな知恵や知識を学びながら料理人としての腕を磨く“山菜料理人見習い”を募集します。
一緒に働くことになる中村美和さんと上滝寛記さんにお話を伺いました。

佐賀の山の未来をおもしろく

毎年どの季節にどこでどんな山菜が採れ、どうやったらおいしく食べられるのか、調理以外の使い方があるのか、県庁に籍を置きつつ実際に山に入り、学んで伝えることが“山菜料理人見習い”の主なお仕事になります。どうして、こんな魅力的な仕事が生まれたのでしょうか?

中村さん(以下、中村) 20代から40代くらいの若い世代にも、家族でもっと気軽に山へ遊びに来ていただきたいと私たちは考えています。そのためにも、山の恵みを活かす方法を知る地域で暮らす人たちの知識や経験を受け継ぎ、同世代や次の世代に伝えていける人の存在が重要です。それが今回募集させていただく“山菜料理人見習い”につながりました。山菜料理人見習いの方にはまずは県庁のさが創生推進課に席をご用意しますが、活動範囲は佐賀県全域の山になりますので、車での移動が多くなると思います。

上滝さん(以下、上滝) 来られる方の希望を聞きつつ、任期の初年度は県庁に近い佐賀市内に住んでいただきたいと考えています。佐賀市内からですと、県内のどこに行くにしても行きやすいんです。2年目以降は、主な活動の場をより山に近い地域に移すことも考えられますので、どこに住むのかは協力隊の方とともに検討していければと思っています。

北部と南部を玄界灘と有明海に挟まれた佐賀県は、海と平野のイメージが強いかもしれませんが、東には脊振山系、西には多良岳と山も充実しています。そこには、いわゆる里山の暮らしがいまも残っています。そして、菖蒲ご膳をはじめ、佐賀の山菜料理の大先輩たちがその経験と確かな知識を伝えようと待ってくれています。
山間部には地域おこし協力隊の先輩もおり、佐賀県採用の現役隊員たちが中心になって山の魅力を発信するローカルメディア「佐賀のお山の100の仕事」や、山暮らしのプラットフォームを提供するNPO法人Murark(ムラーク)なども心強い存在です。

料理上手より、まずは教わり上手に

地域おこし協力隊の任期中、こまかい数値目標などは設定されていません。自ら考え、動くことが大切ですが、おおまかな流れは以下のようになります。

1年目:たくさんの人に会って山菜料理などの知識を学び、記録し、地域の人とつながる
2年目:学んだことを少しずつアウトプット。料理教室や体験型イベントを企画・運営しつつ、SNSなどで情報発信
3年目:山の恵みを使った料理の魅力を独自に発信。山菜料理の輪を広げるための人材育成

「収集」「記録」「発信」「育成」
こう書き出すと、とても堅苦しく感じられるかもしれませんが、要するに“佐賀の山地に住むおばちゃん、おじちゃんたちと仲良くなる”のが最大のミッションです。
もちろん料理人見習いですから、料理の基礎知識があり料理上手でセンスがあるにこしたことはありませんが、それよりも「素直に教わることができる」かどうかです。また、地域に入っていくわけですから、円滑な対人関係を築けることも大切です。また、地域の人たちは誰かに自分たちの技術や知識を教えることに慣れている人ばかりではありませんから、「聴く力」も磨かれることでしょう。

菖蒲ご膳の西さんも本を読んだり、植物の先生から学んだりしたそうです。

上滝 「佐賀はなんもなか」と話す高齢の方がまだまだおられるのですが、今の若い世代にとっては、知りたいし体験したいことがたくさんあります。 土から見えていないタケノコが生えている場所がわかったり、梅干やたくあんの漬け方やお味噌のつくり方なども、私たちの祖父母や曽祖父母の代で自然とやっていたことが各家庭で伝わっていないんです…。 料理人見習いとして来られた方が興味関心を持ってそれらを聴くことで、地域のおばちゃんやおじちゃんたちも自分たちがやってきたことの自信につながるでしょうし、若い世代などは知識を教わり、体験もさせていただける貴重な機会になると思います。

担当の上滝さん。趣味は駅伝で、お昼休みには毎日かかさず走り込みに行くとか。

中村 見習い期間中に、より多くの地域の方と出会い、教わったことやそれを踏まえたアレンジなどを県が運営する「さがじかん」のサイトやfacebookといったSNSを通して積極的に発信していただきたいです。 最終的には料理教室を開催したり料理のレシピや知識を冊子などにまとめたり、見習い期間が終わってからは、その人自身に山で活躍するキーパーソンになっていただければと思います。そして、ゆくゆくは次の人につなげたり、知識を多くの人に伝える活動をしていってほしいですね。

地域に入り、里山と人をつなぐ

佐賀県庁には「やりたいこと」を3年がかりで形にしていく土台がすでにあります。山菜料理人見習いの担当、さが創生推進課は、地域の方々のプロジェクトや希望を支える「自発の地域づくり」にも取り組んでいるそうです。

中村 さが創生推進課では、「地域の方々のやりたいこと」を「自発の地域づくりプロジェクト」として、応援しています。私たちも、実際に地域に赴き、地域の困りごとや地域でやりたいことを一軒一軒訪ねて掘り起こしたり、実現のために必要な計画を一緒に立てたりしています。

上滝 その中から、関東の市場で「全国一」の取扱量を誇るコハダに焦点を当てた「竹崎コハダプロジェクト」や、こどもたちの山でのサウナ体験、お茶が名産の嬉野では手紙を送るように大切な人にお茶を贈る「グリーンレタープロジェクト」などが始まっています。

このプロジェクトの中では今回の協力隊の仕事とつながるような「山の魅力を“食”という切り口から伝えたい」という案も出たそうです。そんな地域の声を元に今回の仕事の募集は生まれました。だから、 “あなた”との出会いを楽しみにして、伴走してくれる多くの人が佐賀にいることは間違いありません。今後共に働く県庁のおふたりからは、こんなメッセージをいただきました。

上滝 迷ったり悩んだりしたらすぐに相談してください。いろいろな人に関われて美味しいものが食べられる職場です。私たちもまだ知らない佐賀の魅力を一緒に探していきましょう。

中村 チームで動くことが多くなると思いますので、一緒に楽しくチームに入ってくれるとうれしいです。県庁所属だからこそ、佐賀県全域を見て回れますから、佐賀をじっくりと楽しんでください。

担当の中村さん。実は、西さんと同じ富士町出身の里山育ち。

山地には「過疎化」「高齢化」「若者の人口流出」などの問題があり、地元に対して良いイメージを持っていない方もおられます。しかし、実際にそこに“ある”ものの価値に気づき、活用していけば、“唯一無二”が見つかるはずです。“山菜料理人見習い”は、その「価値の再発見」をお手伝いし、里山と人をつなぐ仕事です。たくさんの人との出会いとそこでしかできない経験が、佐賀であなたを待っています。

取材・文:池田愛子

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