PROJECT05 子どもと居場所

「ただいま」を言える場所を増やす 子どもの居場所立ちあげサポーター

佐賀県庁 男女参画・こども局こども家庭課
副課長 石丸勝明さん
主事 杉野純平さん

取材・文:池田愛子

PROJECT 5

佐賀県庁では、「子どもの居場所」を新たに立ちあげたいと考えている方や団体の手助けをする地域おこし協力隊、「子どもの居場所立ちあげサポーター」を募集します。勉強や遊びができる場所や、食事を提供したり、「子どもの居場所」に決まったものはありません。ただ、こどもたちが笑顔でいられ、何か困ったことがあれば、大人に頼ることができる場所。そんな場所を地域に増やすためのお仕事です。
「子どもの居場所立ちあげサポーター」と机を並べることになる、佐賀県庁こども家庭課の石丸勝明さんと、杉野純平さんにお話を伺いました。

こどもが行きたくなる場所が「子どもの居場所」

佐賀県庁では平成27年度から「子育てし大県“さが”プロジェクト」と銘打って、出会い・結婚に関する支援、妊娠・出産に関する支援、子育て・自立への支援などライフワークの段階ごとの施策を打ちながら、「佐賀で子育てをしたい」と思ってもらえる環境づくりを推進しています。
いろいろな支援や環境づくりがある中でも、こども家庭課で担当している事業の1つに「子どもの居場所」の推進があります。どんな思いで「子どもの居場所」を支えているのでしょうか。

石丸さん(以下、石丸) 「子どもの居場所」は、こどもを支えたい大人の気持ちでできています。実は、こども自身に「子どもの居場所」が欲しいかを聞いてもピンとこないのではないかと思っています。でも、もし校区内に気軽に立ち寄れて、“ほっと”することができて、見守ってくれる大人のいる場所があったら、やっぱりこどもたちは嬉しいはずなんです。そして、安心できる場所で大人や同級生、下級生、上級生と関わる機会があることで、情緒や人との関わり方、豊かな心が育まれていくんだと思っています。 実際に、唐津市には、何年も続いている「子どもの居場所」があります。そこは本当にこどもたちから大人気で、居心地がいいのか、みんながとにかく行きたがるんです。それで、収容人数を越えてしまうことが多いので仕方なく整理券制にしたそうです。ここまでこどもたちから求められる居場所って素敵ですよね。 他にも、武雄市にも何年も続いている「子どもの居場所」があります。そこでは、学校が終わってから、親が帰ってくるまでの空き時間を、こどもたちが安心して楽しく過ごせるような居場所を提供しています。 「子どもの居場所」って言うと、特別な子が特別な時に行く場所だと思われがちですが、こういった居場所を支えている大人たちはそういうことだけを想定しているのではなくて、こどもたちの健やかな成長と心の豊かさを育める環境を提供したくてやっているのではないかと思っています。 もちろん、なにか問題を抱えているこどもがいたらサポートしますし、そういった貧困のこともカバーされていると思いますが。ただ、「子どもの居場所」が誰にでも開かれて自由に出入りできる方が、問題を抱えているこどもたちにとっても足を運びやすいと思うんですよね。

佐賀が大好きな担当の石丸副課長。なんでも相談にのってくれる頼もしい存在。

杉野さん(以下、杉野) もしかしたら、子どもの居場所がなくても何とかなるのかもしれない。でも、昨年から続く新型コロナウイルスの影響でしばらく閉所されていた居場所が再開されたとき、ひとりの子が話しかけてきて「ここにまた来れるようになって良かった」と、ほっとした笑顔で言ったんです。そのとき、子どもの居場所の重要性を改めて認識しました。家でひとり遊びをするのもいいかもしれませんが、やっぱりこどもにはいろんな人と触れ合う機会が必要なんだと思います。

掘り起こしたいのは、お金では買うことができない志

こどもの成長や心の安定に影響をもらたす「子どもの居場所」。まだまだ県内にはそんな居場所の設置が進んでいない市町もあるそうです。どうしたら増やすことができるのでしょうか。

石丸 こればっかりはお金をかければどうにかなる、という話ではないんです。「子どもの居場所」がないから、誰かやりなさい、と言ってできるものではない。こどもや地域の役に立ちたい、何かしたい、という気持ちのある人たちがいないとどうにもならないのが「子どもの居場所」です。こどもたちが安心できるのは、本当に気持ちのある大人がいてくれるからだと思うんです。だから、私たちは、そういう志の芽を伸ばしていくサポートをしていきたいと思っています。志がないとできないけれど、志だけでもできないセミパブリックな性格をもった場所です。

杉野 「子どもの居場所」を立ちあげるためには、さまざまなひと・もの・そしてお金も必要です。場所を準備したり、こどもに居場所の存在を知ってもらうためのアプローチが必要だったり、運営もひとりきりではできないので、ボランティアスタッフが必要だったり。全部ひとりでやることは難しいですが、何か一部でも役に立ちたいという気持ちを持った人同士をつなぎ合わせることでひとつの居場所が出来上がります。

佐賀県庁では、今まで、こういった運営のサポートやマッチングの機会を一般社団法人さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会(以下、こどもプロジェクト)に委託をし、ともに行ってきました。たとえば、居場所づくりを主催する人に対して、開催場所や食材を提供してくださる方を結びつけるサポートです。

石丸 現状は、公的な助成などが「子どもの居場所」にはないため、少しでも運営されてる方の負担が減るような働きかけをしています。 企業が社会貢献事業(CSR)として支援を申し出られたり、個人の方でも余っている野菜を役立てたいといったご連絡をいただければ、メールやSNSで呼びかけ、必要なところに届くようにするということもしています。

杉野 こどもプロジェクトさんには、「継続して居場所を維持する」支援を主にお願いしています。そのうえで新たに立ちあげたい方の支援もやっていただいているのが現状です。「子どもの居場所立ちあげサポーター」には、志はあるけれど、どうしたら居場所を立ちあげられるのかがわからない人や、興味はあるけれど立ちあげに不安を抱えている人の発掘とサポートをお願いしたいと思っています。 もちろん居場所開設までの道のりは簡単ではないと思いますが、3年間の任期の間に1つでも居場所の立ちあげをサポートしてもらえたらと思っています。「子どもの居場所」は、まだまだ地域差も激しく、拠点の数も足りていないのが現状です。

佐賀県庁こども家庭課では子どもの居場所を立ちあげるためのハンドブックを作っています。

バランスを取りながら前向きに!

理想は小学校の校区ごとに1つの「子どもの居場所」ができること。とはいえ、まずは各市町にひとつずつ、つくることを目標にかんがえているそうです。こども食堂などの取り組みがクローズアップされがちですが、「こどもたちがただいるだけの場所も子どもの居場所です」と石丸さんはいいます。
どんな人が「子どもの居場所立ちあげサポーター」には求められているのかを聞きました。

石丸 「子どもの居場所立ちあげサポーター」の重要なミッションは、“現場を知ること”です。サポーターとしての勤務はだいたい週に4日ほどになりますが、県庁に出勤し座って仕事をしてもらうのは、そのうちの2日くらいあれば十分と考えています。残り2日は情報収集だったり、実際に子どもの居場所をつくりたいという志を持っておられる方に会い、悩みごとや相談を受けて支援する時間に充ててほしいと考えています。 「子どもの居場所」は、運営者さんの気持ちの部分がとても大きいです。とはいえ、我々が行うのはあくまでサポートであり、やりすぎてしまうとその場所が自立できなくなってしまいます。なので、バランスに気をつけながら思いを持って取り組んでもらうことが必要になると思います。着任する「子どもの居場所立ちあげサポーター」さんのことを、絶対にひとりにはしません。いつでも困ったら相談できるような環境を整えたいと思っています。

育休から復帰したばかりの担当の杉野さん。好きな休日の過ごし方はこどもと遊ぶこととサッカーをすること。

杉野 大前提としてこどもが好きな方が来られると思いますが、おおらかに構えて前向きな方と一緒に仕事ができたらと思っています。石丸副課長も私もそうですが、佐賀に一度住むと、出て行きたくなくなるほどのいいところです。県内をくまなく回れますので、佐賀のいいところをたくさん探していただきつつ、こどもたちがほっとできる場所を一緒につくっていきましょう。

県庁や各市町の自治体、市民団体、居場所の運営者、学校関係、地域の人々…たくさんの方が関わる事業ですが、根底にあるのは「佐賀のこどもたちの健やかな成長」への願いです。佐賀の未来を担うこどもたちのために、一歩を踏み出してみませんか。

取材・文:池田愛子

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