PROJECT05 子どもと居場所

家族の在り方からはじまる 自分らしい生き方

子どもの居場所立ち上げサポーター
草田 彩夏(くさだ あやか)さん

取材・文 門脇恵

PROJECT 5

なんの制約や約束がなくても気軽に立ち寄ることができる。見守ってくれる大人がいる。「子どもの居場所立ち上げサポーター」は、こどもたちにとってそんな心の拠り所となる居場所をつくる仕事です。

着任したのは明るく前向きで何事にも一生懸命な草田彩夏さん(以下、草田さん)。誰もが最初に出会う社会は、家族という最小単位の社会ではないでしょうか? その家族の在り方をより良くすることで、草田さんは誰もが自分らしく生きていきやすい社会へとつなげたいと話します。草田さんが家族の在り方を意識したきっかけや、佐賀への移住を決意した思いを伺いました。

家族という社会の最小単位の在り方からできること

東京の真ん中で生まれ育ったという草田さん。どんなこども時代を過ごしたのでしょうか? まずは今までのことを伺いました。

草田さん(以下、草田) 自分で言うと少し恥ずかしいのですが、生粋のシティーガールでした(笑)。小学生の時から電車通学をしていて、小学生の折り返しくらいから塾に通っていました。自分の意志もあったけれど、振り返ってみると周りの同級生や親の雰囲気から自然と自分もがんばらなきゃと、受験したり、良い成績をとろうとしたりしていたのだと思います。

自分ではそんなつもりはなかったのですが、大学1,2年生のときには気が付いたらいろんなことをすごくがんばっていました。授業やインターンなど分刻みのストイックなスケジュールを送る毎日。あるとき、友人から「どうしてそんなにがんばれるの?」と聞かれたことをきっかけに自分のことを振り返りました。自分でも「なんでだろう?」って不思議だったんです(笑)。

大学時代はサークルや課外活動などいろんなことに挑戦していたそうです。

草田 そのとき、自分の気持ちを大事にしたいと思っていたはずなのに、いつの間にか周りに合わせた、外からの評価を気にして一生懸命になっていた自分に気づいたんです。そして、どこかでもっと他者から認めてもらいたい、共感してもらいたいという気持ちを抱えていたことに気づきました。

だからと言って、自分のことだけを主張し、認めてもらいたいというのではなくて、相手のことも理解し認めたい。どちらかが押し付けるのではなく、お互いの気持ちを大事にできるような生き方ができれば、もっと自分らしく生きていくことができるのでは? と考えるようになりました。

人は成長していく過程で、家族や学校などいろいろな社会と触れていきます。その中でも、他者との関係性を最初につくるのは家族という最小単位の社会からなのではと考えています。だから、家族の在り方にアプローチすることで、お互いに認め合える関わりができる人が増え、より良い社会になっていくのではないかと考えるようになりました。就職先を決めるにあたって、誰かや社会の役に立つ仕事は色々あると思うのですが、私が携わるなら家族の在り方を深めることが仕事を通じてできたらいいなと思ったんです。

「発達に困りを抱える」家族との関わりの中で学んだ違いを認め合うこと

家族の在り方に関心を持つようになった草田さんは、「発達に困りを抱えるこどもとその家族」のみなさんに寄り添う仕事をすることに。そこではどんなお仕事をして、どんなことを学んだのでしょうか。

草田 たとえば、小学校に入って集団行動をするときに、勝手に話し始めてしまい集団行動ができないとか。そういうときには「この子は何ができるようになったら小学校で心地よく過ごせるのか」をご家族のみなさんと一緒に考えます。そして、手を挙げて許可を得てから話すことを身につけられれば大丈夫という結論が出たとしたら、そのスキルを身につけられるように1対1で練習をする。また、親御さん方がこどもたちにどうかかわって良いのかを助言をしていくことで、こどもたちの成功体験をつくっていく。そういったことをしていました。

草田 発達障害にアプローチをする仕事でしたが、その特性はいろいろあり、これと決まっているわけではないんです。お互いの違いが何かを理解し、その違いに対してお互いにどうやって配慮したらいいのかを考える。そういう考え方が、私が目指している家族の在り方に近いと感じました。自分自身が要求してばかりだと相手も傷つけてしまうかもしれない。でも、お互いの違いを知れば受け入れたり、許し合ったりすることができるようになり、自分らしくいられる環境に近づくと思いました。

駄菓子屋さんのように身近なところに頼れる場所をつくりたい

やりがいのある仕事をしていた草田さんはどうして佐賀への移住を決意したのでしょうか。そして、佐賀ではどんなことをしたいのでしょうか。その思いを伺いました。

草田 移住を決意したのには2つのきっかけがあります。1つは地方に暮らしを移してみたかったことです。大学4年生の夏にシアトルの郊外で1か月過ごしたのですが、その時にはじめて満員電車に押しつぶされずに歩いてどこかに通うという体験をしました。都会では知らない人と話す機会は滅多にないですが、そこはバスの運転手さんや隣の家で庭仕事をしている人、身近な人と気軽に声をかけあいます。そんな関係性や暮らし方にホッとして、地域の人々との関係性を紡げる環境にに身を置きたいと思い、地方への移住を考えました。

草田 もう1つは、家族が自分らしくいられる環境を考えたときに、まるで、ひと昔前の駄菓子屋さんのように、暮らしの中にふらっと頼れる場所があったらいいのにと思ったことです。何かのプロジェクトや子育ての相談窓口も大切だと思うのですが、子育てをしていて忙しい人やこどもたちからするとなかなか行きづらいのが現状です。気軽に立ち寄って話せたり、気持ちをきいてくれたりする頼れる場所があることが大切だと思うんです。でも、都会だとなかなかそういったカルチャーがないので、まずは浸透しやすい地方で試してみたいと思いました。これから佐賀でたくさんの人と出会って少しずつそういった場所をつくっていけたらと思っています。

佐賀でいろんな人と出会い、できることを見つけて行くことは宝探しのようだと話す草田さん。3年後は腕の中にたくさんの宝物を抱えているのではないでしょうか。佐賀でも、認め合い、自分らしくいられる家族の在り方が少しずつ広がりそうです。

取材・文 門脇恵

採用情報はこちら

Topページへ