PROJECT04 移住者の声と行政

佐賀に住み、佐賀に暮らす人たちと 一緒に幸せになる仕事をしたい

移住者の声を佐賀県庁に届ける仕事「アフター移住サポーター」
石神 惠美子(いしがみ えみこ)さん

取材・文 佐々木元康

PROJECT 4

佐賀県さが創生推進課内にある移住支援室。これまで多くの佐賀県移住者への支援を行ってきた彼らが次に取り組むのは、移住後のサポートです。「アフター移住サポーター」は、移住者がその地に馴染み暮らしを整え、末永く幸せに定住するために何が必要なのかを調査し移住支援室にその情報を届ける仕事です。

新たに、「アフター移住サポーター」に就任したのは、海外経験も豊富な石神惠美子さん(以下、石神さん)。国内外で暮らしてきた石神さんは今までどんなことを考え、どんなきっかけで佐賀に移住したのでしょうか? そのきっかけとこれからの暮らしと仕事のことを伺いました。

いろいろな人の考えに触れることが好き

石神さんは映画の情報サイトの編集者・記者として働かれていました。毎日、世界のニュースを読み、それを翻訳したり、ヴェネチアの国際映画祭などに取材へ行ったり、充実した日々を送っていたそうです。「アフター移住サポーター」になる前の話を、まずは伺いました。

石神さん(以下、石神)  大学時代は英米文学科を専攻し、サークルではファッションショーの企画・運営や、服のデザインをしたりしていました。卒業後はイギリスの大学院に進学し、映画とファッションの評論を専攻しました。イギリスの先生方からはそもそも「なぜ勉強をするのか」を学んだことが大きかったです。

イギリス時代の石神さん。たくさんのことを学んだそうです。

石神 ある恩師は、大学以降での学びは“立食パーティーみたいなもの”だと語っていました。テーブルごとにそれぞれの議題について話し合っているのが学派で、私たちはテーブルを訪ねまわり、様々な立場の考え方に触れていく。その上で、自分の考えを整理し伝えていくのが論文の役割である、と。その教えのおかげで、大学院時代に文章を書くことの楽しさを知ることができたと思います。いろいろな人の考えに触れることが好きなので、その後に就いた編集者や記者という仕事は自分に向いていたなと思います。

自然に近い暮らしを求めて九州へ

充実した暮らしを送っていた石神さんはなぜ佐賀に移住し、「アフター移住サポーター」に応募されたのでしょうか?

石神 WEBメディアの仕事の後、オーストラリアで邦人向け情報紙をつくる仕事に就きました。海外で働いてみたい気持ちは元からあって、東京での日々は充実していましたが、体調を崩し始めたことをきっかけに日本を出ました。イギリス留学時代もそうでしたが、オーストラリアでも多様なバックグラウンドの人たちと出会い、彼らの価値観を知ることができたのは貴重な経験です。また、当時住んでいたシドニーの近郊で大規模な山火事が発生したことで、より深く環境問題に向き合うようにもなりました。

人と人とのつながりを大切にする石神さん。佐賀でもたくさんの出会いがありそうです。

石神 コロナ禍で帰国し、再び東京で働くことも考えましたが、オーストラリアでのように自然に近い暮らしをしたいという気持ちもありました。九州にはかねてから興味があったのですが訪ねたことがなかったので、数カ月ほど九州を巡ることにしました。九州はとにかく水がきれいで、作り手がわかる安全で美味しい食べ物が豊富にあることが魅力的でした。また、海外で暮らすたびに、日本人でありながらいかに日本の文化や歴史に無知であるかを痛感していたので、それらを学ぶという点においても九州は適していると思いました。

そんな九州の訪問先で地域おこし協力隊の方に出会い、そういった職業があることを知り、地域と密接に関わるこの仕事に興味を持ちました。そして、友人から東京・有楽町のふるさと回帰支援センターについてたまたま教えてもらい、移住フェアで担当の柳川さんに「アフター移住サポーター」のことを教えていただき応募することにしました。

九州のコミュニティはどんどん人がつながっていくイメージ

佐賀での新しい暮らしを念願叶って送りはじめる石神さん。仕事と暮らしの中でどのようなことを実現したいのかを伺いました。

石神 私は地域に入っていくうえで、コミュニティ形成に興味があります。九州の旅をしていたときに、情報収集のために地域のコミュニティを担っている場所やイベントを訪ねていました。

東京だとイベントが終わった後にはまた他人同士になっていく感覚があったのですが、九州だと良い意味でも悪い意味でも世間が狭いので、すぐにまた会えるし、人と人がつなががっていく感じが手に取るようにわかるんですよね。そのことが嬉しかったんです。東京は便利すぎるあまり、人に頼ることってそうそうないけれど、地方では不便さもあるからこそ、他者の存在が大きくて。有機農家さんの家に滞在させていただいていた時に、気づいたら、初めましてのご近所さんと一緒に食卓を囲んでいるなんてことが何度もあって、そういう距離が近いコミュニケーションに海外っぽさを感じる部分もありました。自分がそういったコミュニティで感じた居心地の良さを、アフター移住サポーターとして提供していけたらいいですね。

石神さんは佐賀の山間部での暮らしを選びました。自然の溢れる地域で新しいことにたくさんチャレンジできそうです。

石神 暮らしの面では、佐賀の新鮮な食材で料理をしたり、ハーブを育てたり、丁寧な暮らしをしていきたいと思っています。まずは、一移住者として自らの暮らしを整え、その延長線上で、自分のやりたいことが明確になっていくような気がしています。そして、さらにその先になりますが、移住者も地元の人も、ここで暮らしている人たちが幸せになれるように、いろいろな人と人とをつなげられるような場をつくってみたいと思っています。

明るく元気で、話すことも聴くことも得意な石神さんが移住者と地域の人を、行政と移住者をどのようにつないでいくのでしょうか? 佐賀の移住施策からますます目が離せません。

取材・文 佐々木元康

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