PROJECT08 市民活動と人

モットーは即行即止。 営業で培ったチカラを中間支援につなげる

さがむすび隊
特定非営利活動法人さが市民活動サポートセンター
野見山 茂(のみやま しげる)さん

取材・文 門脇 恵

PROJECT 8

「さがむすび隊」は、CSO連携型地域おこし協力隊です。人と人とをつなぎ、CSOや企業などの民間団体と行政をつなぐ役割をもっています。ひとりでは解決できないことも、人と人とをつなげることで解決できることがたくさんあります。「さがむすび隊」は、今よりちょっと、人と未来にやさしい社会の仕組みをつくる手助けをする仕事です。

特定非営利活動法人さが市民活動サポートセンター(以下、さがサポ)と連携した「さがむすび隊」に着任したのは北九州市出身の野見山茂さん(以下、野見山さん)。野見山さんは、ご自身でも起業され、長い間、社長として会社を守ってきた経験があります。そんな野見山さんは一体なぜ「さがむすび隊」に手を挙げたのでしょうか? そのきっかけや、市民活動への思いを伺いました。

営業会社の社長として培ってきたチカラを社会課題の解決につなげたい

野見山さんは12年前に起業し株式会社を立ち上げたそうです。なぜ全く違う業界の「さがむすび隊」に手を挙げたのでしょうか? まずはこれまでの話を伺いました。

野見山さん(以下、野見山) 元々はとても挫折の多い人生だったんですよ(笑)。19歳で社会に出てから、20社30職くらいの仕事を経験してきました。1番給料が良いのが営業職ってことで、本当にいろんな商材を営業してきました。その中でも、一般家庭向けの太陽光発電システムやオール電化設備を販売していたときに、お客さんからとても喜んでもらえたのが嬉しくて、縁もあってその業界で独立して起業しました。

社員旅行での野見山さん。たくさんの業績を上げてきました。

野見山 ところが、コロナ禍で状況が一変しました。営業方法のメインは訪問販売だったのですが、コロナ禍の中でまったく知らない人のところへ訪問することが難しくなりました。社員たちも徐々に会社を離れていき、2020年の終わりごろについに会社には自分1人になりました。このときに、新しい事業の方向性や、自分に何ができるかを見つめなおしたんです。

そのタイミングでご縁があって、佐賀県で、こどもの孤食や家庭に問題を持ったこどもの食事や居場所を守る活動をしているNPO法人に出会いました。なかなか周りの企業への営業ができずに、十分な支援が受けられていない状況だと聞き、営業として団体の活動を周りにPRする仕事を1か月のうち1週間だけ手伝うようになったんです。

経営者として業績を上げてきた野見山さんは、一変してボランティアのような時給で仕事を手伝うようになったそうです。

野見山 最初はやっぱり、一人親方で社長をしてきたわけですから「俺が関わるんだったらもっと効率よく稼げる方法もあるんじゃないか?」と思ったりもしました(笑)。でも、そこで市民活動や社会の課題解決を図ろうとする人たちに出会って、誰かのために何かをしようと一生懸命な人たちがたくさんいることに衝撃を受けたんです。こんな人たちが世の中にいるんだって驚きました。

社会課題の解決のためにこんなに奔走している人がいる。なおかつ自分が今まで培ってきた営業の力が役に立つというならこれは良い出会いだと感じ、そのご縁から思い切って3年間「さがむすび隊」としてチャレンジしようと思いました。コロナのことがなかったらこんな面白い出会いはなかったと思うと有難い気持ちです。

確かな実力と謙虚さを兼ね備えた野見山さんの佐賀でのチャレンジが楽しみです。

家族との関わりの中で感じた社会課題が原点

さがサポや佐賀県内のCSOと関わるようになった野見山さん。この出会いから、起業当初に掲げていた夢を思い出したそうです。一体どんな夢だったのでしょうか?

野見山 実は、起業したのは、障害を抱えた人のための新しい働く場をつくりたかったからなんです。8年前に亡くなったのですが、私には脳性麻痺を抱えた1歳違いの弟がいました。彼がいてくれたおかげで、こどものころから障害を抱えた方やその家族のコミュニティに自然と関わることが多かったんです。うちの両親も彼を支えながらそういったコミュニティで活躍していました。

でも、そのコミュニティを見ていたときに、障害を抱えた人を支えるのはその家族たちなんだと気づいたんです。そして、「障がいを抱えた人を支えるのはその家族だけでいいのだろうか?」、「通常よりも安い給料しかもらえず、できることも限られているままで良いのだろうか?」そんな疑問を感じていました。

さがサポの山田さんの右腕にぴったりな野見山さん。益々活動が広がりそうです。

家族との関わりの中で社会的な課題を感じた野見山さんは、ただ課題に対して疑問に思うだけでなく行動を起こしたそうです。

野見山 それで、営業という技術を自分が身に着けたときに、営業をもっと細分化したら障害を抱えた人でも営業の仕事ができるようになって、本人にとっても社会にとってもプラスになるんじゃないかと思いついたんです。今の時代はiPadなんかも普及したので、身体が少ししか動かせなくてもiPadなどの端末を動かせれば十分営業できる。

そう思って起業したものの、なかなかうまくいかず……。まずは、一般的な仕事がまわるようになってから、当初思い描いていたようなこともしよう、と考えているうちに気がついたら10年以上経っていました(笑)。そんな創業当初の思いを市民活動に関わる人達に出会って思い出しました。今の自分ならば、今まで培ってきたことを活かして何かのかたちでその時の夢を叶えられるのではないかと思っています。3年間という時間を最大限に活かしてできることをつなげていきたいと思います。

野見山さんのモットーは「即行即止」。思い立ったらすぐに行動し、すぐに行動した分、失敗も多いから本当に無理だと思ったらすぐに止める。そしてまた、行動する。できる限りの方法を模索しながら前へ前へと進んでいく野見山さん。3年間でたくさんの新たな道を切り開いてくれそうです。これからの活躍に目が離せません。

取材・文 門脇 恵

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