vol.3 2023.3.22
西塔大海(SML編集長)× 黒井 理恵(ファシリテーター)
SML編集長の西塔です。このコラムでは、地域おこし協力隊の先に広がる、あまり知られることのないローカルキャリアの世界を、皆さんにご紹介していきます。
今回のゲストはプロのファシリテーターとして活躍されている黒井理恵さんです。
黒井さんは北海道の名寄市にUターンし、北海道でまちづくりに関わりながら全国で活動されています。
ファシリテーションは聞きなれた言葉ですが、実際にプロのファシリテーターとお会いしたり、話を聞く機会は意外に少ないのではないでしょうか? 今回はローカルキャリアでは欠かせないファシリテーターというお仕事についてお話を伺います。
西塔 今日はよろしくお願いします。今回のテーマはファシリテーターというお仕事についてに始まり、ファシリテーターのなり方と続け方。そして、黒井さんのキャリアを振り返りつつ、今のお仕事やローカルキャリとしてのファシリテーションを考えてみれたらと。まず黒井さんのお仕事を簡単に教えてください。
黒井 職種としては「ファシリテーターをしています」と答えています。北海道でまちづくりに関わったり、より良い社会づくりをキーワードに全国で活動しています。私、元々は企業の社会的責任であるCSRのコンサルタントを8年ほどしていて、2014年に名寄市にUターンしてきたんです。職種はファシリテーターで他にもいろいろやっているんですが、その中でもメインは「Nスポーツコミッション(名寄市)」というスポーツ×まちづくりを実践する産官学連携組織で、事務局次長をしています。あとは名寄市の高校と地域をつなぐコーディネーターや個人でコミュニティスペースやコワーキングスペースの運営をしています。それと、より良い社会や世界をつくっていくためのいろんなプロジェクト「さとのば大学」などに参画しています。
西塔 「自分の仕事はファシリテーターです」って名乗っている人をあまり見ないのですが、北海道には黒井さんの他にもいらっしゃいますか?
黒井 あんまりいないでしょうねぇ。これは私のこだわりの1つでもあるんですが、CSRコンサル時代も、あえて「CSRやっています」「CSRのコンサルタントです」と名乗っていました。「CSRって何ですか?」って聞いてもらうことで、CSRの啓発活動をしていたんです。それと同じで「ファシリテーター」も私が言い続けないと世の中の人たちの認知度が上がらないと思い、あえて名乗っています。その結果、10年前よりも名寄市はもちろん、道北の地域、北海道で「ファシリテーターって司会とはちょっと違う、ワークショップやる人ね」と認知度は上がっていると思います。
西塔 啓蒙活動もかねているんですね。ちなみに「ファシリテーターって何なんですか?」って全く知らない人に聞かれたら何て答えるんですか?
黒井 本当に何か新しいことを始めたいとか未来に向かって一緒に走りたいときに、いろんな関係者の人たちを集めてそれぞれ思っていることを机上に乗せて、どういうふうに前に進もうか話し合うことをサポートする人です、と説明します。分かりやすく言うとワークショップの企画・運営ですね、と言うと理解されます。どこでやっているのか聞かれるので、自治体が主催するまちづくりの市民ワークショップとか、観光協会の「この地域の魅力が何かいろんな人に聞きたい」という場や、企業が社会課題解決を1つの事業にしたい場合の相談・サポートなど、いろんな人たちが集まって未知のことにアプローチする際に呼ばれる人です、と答えています。
西塔 聞いた人の反応は?
黒井 ふーんって感じですかね(笑)。ワークショップの時に前に立ってる人というとイメージがわくみたいですね。
西塔 なるほど(笑)。そんな珍しい存在ですが、黒井さんは年間60回くらいファシリテーションをされてるそうですね。
黒井 コロナ前はそれくらいやっていましたね。1番ピーク時で企業と自治体の仕事、両方を受けて月に5本くらいですね。去年から久しぶりにいろいろ戻ってきて、今は平均して月2本くらいかな。私の場合は普通の会議も私が運営するものは対話型にしているので、全部ファシリテーションと換算しています。
西塔 仕事を受けてから、どんなプロセスで進めていくんですか?
黒井 ファシリテーターは当日のファシリテーションだけが仕事だと思われがちですが、事前の準備から始まって、その後もいろいろな仕事があるんです。私がファシリテーションの仕事を受けた場合はワークショップデザインから全てが仕事だと捉えています。 依頼主によってはファシリテーターの仕事を「ファシリテーション」だけだと捉えていて、目的やゴールも見いだせてない状態で、会場も登壇者も全て自分で決めようとするんですけど、ゴールがなんなのかをファシリテーターが握ってないとファシリテーションってできないんですよ。なので打ち合わせでも、まずは「目的・ゴールの確認」をしてプログラムを作って、場合によってはプログラムに適した会場の予約もファシリテーターがすることもあって。普通の会議室、木材の壁のような場所、場のデザインによって対話の内容も質も変わってくるのでファシリテーターはいろいろな会場も知ってないといけないんです。 また、その場に誰を呼ぶのかがめちゃくちゃ大事なので、その「誰か」に「私それ行きたい!」と思わせるオーダーの仕方も大事。さらに宣伝の仕方も必要。終わったあとの「参加者フォロー」は私個人の独特なやり方なんですけど、私にとっては「ファシリテーション」とはその場限りのものではないので、終わった後に「どうでしたか?」「その後どう動いていますか?」とか、3カ月後に参加者みんなのSNSを見て、動きを確認して共有したりする。 そのうえで、報告書まで書くのが私の考えるファシリテーターの仕事です。正直ここまでできないとお金にならないと思います。当日のファシリテーションだけなら誰でもいいんですよね。ここまでコミットしてやるからこそ参加者の満足度も高いし、クライアントの満足度も高いものが生まれる。そうすると1回当たりの価値も高まって優位になってくると思います。
西塔 ファシリテーターの仕事の解像度がぐんと上がりました。ちなみに何件くらい仕事を受けると食べていけるものですか?
黒井 ファシリテーターだけで月に2〜3件することをイメージして設計しています。普通に3件+副業もできると思います。経費は移動費くらいで、そんなにかからないので、あとは自分の時間単価計算ですよね。
西塔 週に1案件ずつやる、というよりは複数の案件を数週間に渡って並行してやってるんですか?
黒井 そうです。オーダーがくるのが2〜3ヶ月前で、打ち合わせが2回くらいあって、終わった後の振り返りが1回あるかないか、の設計だと月3件くらいは回せるかなという感じですね。
西塔 なるほど、ファシリテーターをやっている人から具体的な話を初めて聞きました。皆さんなかなか、お互いにこんな話をする機会は少ないですよね。
西塔 黒井さんのキャリアを振り返ってみたいのですが、CSRのお仕事をされていた時からファシリテーター的な動きをされていたんですか?
黒井 私がファシリテーションという言葉に初めて触れたのは2005年で、拓殖大学の社会人向け講座「開発教育ファシリテーター養成講座」という1年のプログラムに参加し、そこで初めてファシリテーションという言葉を知ったんですよね。その時にワークショップデザインからファシリテーションの基礎から学び、感触として私の得意分野だ!と思ったんですよ。
西塔 講座を受けたときに「いける」という手応えがあったんですか?!
黒井 大学時代からこういうのやってたなって思ったんですよ。ファシリテーションというものを学ぶ以前から「どうやったら学びやすくなるのか」というプログラムデザインをやっていたし、場を促進させるような取り仕切るような、あとは対話をつなげるような、そういうのを自分の得意なこととして大学時代、なんなら高校時代からやってたんですよね。
西塔 なるほど!
黒井 そうなんですよ。だからちゃんと学んだ時に「これ、私の得意分野だ」ってすぐ思ったんです。先日、私のトークセッションをYouTube配信する企画があったので大学時代の友達にリンクを送ったところ、見た友人が「学生時代、りえちゃんが飲みに行った時の振る舞い方と、トークセッションでの振る舞い方がほぼ一緒だ」って言うんですよ。飲み会でいろんな人に話を回すのが得意な人いるじゃない? ちょっと静かそうな人見たら「どう思う?」って振るのが得意な人。そういう人は素養としてファシリテーターの気質を持っていますね。
西塔 飲み会のまわし屋だったんですね(笑)。
黒井 そうそうそう(笑)。他にも会議の時に問いを、「これについて考えた方が良いかも」って言ったりとか、なんとなくそういうことが得意な人はファシリテーションやった方が良いと思います。学んでやるともっとブラッシュアップされていきますよ。
西塔 ファシリテーションの学び方にはどんな方法があると思いますか? 1年くらいしっかりとしたプログラムを受けてないとプロのファシリテーターにはなれない、みたいな世界ですか?
黒井 ファシリテーションの基礎的なスキルってコミュニケーションスキルの延長線上にあって、傾聴・質問・話し方ですね。この辺りの基礎をワンランク上げるための学びはした方が良いと思います。それかコーチングで学んでも良いと思いますね。あとはいろんな対話の場に出ること。またいろんな対話の場をチャレンジして作ってみる。そしてきちんと毎回、フィードバックして、自己内省を計ることがファシリテーターになるステップだと思いますね。 資格がないので、「今日からファシリテーターです」と言えばなれるんですけど、良い場にたくさん触れておくと自分の手持ちの駒も増えていくし、自分でやってみないと分からない世界でもあるので、まず「基礎的なことを学ぶ」、「いろんな場に行って学び、体験してみる」、そして「自分でもやってみる」というこの3つかな。
西塔 最初の「基礎的なことを学ぶ」の中でも、「傾聴」や「質問の仕方」はどうやって学んだらいいですか?
黒井 講座で1度受講するのもいいですし、長い講座じゃなくても単発のコミュニケーション講座のようなものでも似たようなことはやっていますね。1番ワンランク上げやすいのは質問力だと思っていて、『問いのデザイン』という本がぜひお勧めです。ただ聞くのではなくて、意図を持って相手の思いを引き出しながら聞くことはワンランク上がると思いますね。 例えば「昨日ディズニーランドに行ってきたんですよね」から、ディズニーランドで何が起きたのか、なぜ今、その話を私にしようと思ったのか、その中から何を伝えたいのかを引き出していく聞き方はワンランク上の質問の仕方です。質問力の高い人だと2〜3時間話せるじゃないですか。このスキルはどこでも活かせます。
西塔 それこそ飲み会では盛り上がるし、夫婦の関係性においても重要だし、ファシリテーターにならなくても日常の関係性づくりにおいてすごく大事なスキルですね。2つ目の「質の高い場に出る」というのはすっごく重要だと思うんですけど、見分け方のポイントってありますか?
黒井 行く前に見分けるのは難しいかもしれないですが、告知の説明文に自分が「知らなかった」とか「ワクワクする」とか、「確かに!」という気づきが与えられるようなキーワードが入っていなかったとしたら、そのファシリテーターは力がないか自分と合わない可能性が高いと思います。例えば「地方創生について語ろう」だけでは何もピンとこないじゃないですか。それを「地方創生」というものをどれだけ分解して場を設定していくのか、どういう問いを投げるのかはファシリテーターがやるんですよ。そこからターゲット設定をして告知文を打っていくので、それがなされていない場には良いファシリテーターが入っていない可能性が高いかもしれないですね。
西塔 一番大事なワークショップデザイン、最初のコンセプトや問いを立てていないからタイトルが面白くない、告知文が興味を引かないということなんですね。
黒井 私が地域活性をキーワードにワークショップをする時は、終わったあとに自分たちで横につながって動くことをゴールに設定することが多いので、動きたい人を集めるんですよ。だから動きたいけどウズウズしてる、みたいな人に向けて響く告知文を作り、そういうワークショップ設計と目標設計をするわけですね。これが最初の見分け方で、いろんな場に行ってみると好みによって違うと思うんですよ。 あとは、全体的にファシリテーターとして好ましくないのはファシリテーターが前面に出ることなんですよ。ファシリテーターはあくまでサポート役なので対話の場が終わった時に「え?今日ファシリテーターっていたっけ?」と思われたら良いファシリテーターなんですよね。参加者が「私たち最高だね!」「いい話できたよね。良い人が集まって最高だね」と思わせる場が作れたら良いファシリテーター。最後までファシリテーターが前面に出てぐいぐい引っ張ってる場はあまり良いファシリテーターではないですね。だから切ないんですよ。うまくいったら私は関係ないし、うまくいかなかったら私のせいなのがファシリテーターなので。
西塔 全てを飲み込む寛容さ、仏の心が必要ですね。
西塔 ファシリテーションのスキルを身に着けるには、「基礎的なことを学ぶ」、「いろんな場に行って学び、体験してみる」、そして「自分でもやってみる」というこの3つということでしたが、そもそも良い場を体験できる機会って少ないと思います。僕らはどうやってそういうものを見つけて、経験を積んで行くといいんでしょうか?
黒井 それはねぇ、やり方があるんですよ。自分で場を作って優秀なファシリテーターを呼ぶ、です!
西塔 自分でこういう会をやりたいと企画して予算を集めて?
黒井 はい。九州にも優秀なファシリテーターはいると思います。地方でイノベーションを本当に起こしたいと思うのならば、自分で場を開いた方が良いと思います。私も最初、名寄市でも北海道でもかなりやっていました。ファシリテーターとしての覚悟みたいなところかもしれないですね。良い場を見たいんだったら自分で作って優秀なファシリテーターを呼ばないと地方では難しいかもしれないですね。
西塔 本気であれば、大人が出し合えば無理な金額ではないから、呼んでみて体験することから学び始めるというのは1つの方法ですね。僕ならば声をかけるのは福岡テンジン大学の岩永 真一さんとか、津屋崎ブランチの山口覚さん、少し離れますが山口県のNPO法人市民プロデュースの平田 隆之さんたちにもいつもお世話になっています。全国を見渡せば青木将幸さんも間違いないし、西村佳哲さんにお願いすることもありますね。
黒井 ファシリテーター と名乗って、それが収入源になっている人って国内でも30人もいないんじゃないかな。
西塔 実はすごく少ないですよね。そういう方を呼んで自分で場を開いてみることが、実はローカルでファシリテーションを学ぶ一番確実な方法かもしれない、というのはすごく大事な知見ですね。
西塔 自分でファシリテーションやってみるしかない、って話されたじゃないですか。いきなり30人の会をやるとか想像もできないと思うのですが、一番最初の小さなステップってどんなものがあるんでしょうか?
黒井 自分で場を開くにあたって、設計の相談をファシリテーターにしたら良いと思います。例えば「こういう人を集めて、こういう場を開きたいんですけど、どうしたらいいですか?こういう設計で考えてるんですけどどう思いますか?」とか。そういうのを壁打ちできる人を探して見つけると良いと思いますね。ファシリテーターは設計が命なので、1時間くらい相談させてもらったら、そのアドバイスの中にファシリテーターの英知がめちゃくちゃ詰まっているので、すごく学びがあると思います。その時に、1人ではなく、2人ないし3人くらいの仲間を作ってワークショップのイベント設計をすると良いです。ワークショップの設計自体をワークショップにするんですよ。
西塔 ちょっとメタ的ですね。
黒井 そうそうそう。例えば地域活性にまつわる対話の場を商店街で開きたいとして、自分1人で考えると限界があるんですよ。それを2人か3人で同じ思いを持っている人と話をする。「商店街でやる意味って何かな?」「地域活性ってそもそも何だろう?」「地域が活性しているってどういう状態かな?」「商店街の中で地域活性に対して本当にインパクトを起こせそうな人って一体誰なんだろう?」みたいなことが対話の中で生まれるんですよね。この対話がすごく大事なので。プロになってくるとそういった対話を自分の脳内でできるんですよ。でも初めての人にはハードルが高いと思うので、同じ思いを持ってる数人で、ワークショップを作るのが良いと思います。その過程で1回くらい活躍しているファシリテーターに「ちょっと相談乗ってください」って入ってもらって見てもらうと良いと思いますね。
西塔 めちゃくちゃ実践的ですね。
黒井 ファシリテーターって場の1つ1つ、全てに意味を持たせているんですよね。意外に感覚的じゃなくて、最後の対話につながるためのチェックイン(導入)、このタイミングでコレ、何分、何人のグループで、みたいなことをすごく意味を持たせて設計しているんです。なので、自分で設計する時には、プログラムの一つひとつでそういった「意図」を説明できるか、というのを意識すると良いかと思います。プロのファシリテーターを呼んで場を開いた時には、終了後などに別途時間をとってもらって、プログラムの意図を聞いたら良いと思います。ワークショップ前に言うのはファシリテーターとしては種明かしのようなので、あまりやりたくないんですけど、終わった後は、むしろ聞いて欲しいんです(笑)。
西塔 確かに確かに!これは偶然じゃないんですよ、っていうところを示したいんですよね。
黒井 一時期ファシリテーターを養成したいと思っていた時に、まず経験してもらう意味で対話の場を開いて、終わった後に全部について種明かしした「種明かしシート」を渡してたこともあります。
西塔 すごいなぁ。どうスキルを身に付ければ良いのかが見えてきたように思います。しかも、どういう人が向いているのかというのも。最後に、ファシリテーターを続けていくために、黒井さんが意識してやっていることがあれば教えてください。
黒井 日常の中でもちょっとした違和感を必ず無視しないようにしています。道を歩いていて、「美味しそうなカフェどれかな?」みたいなのもそうだし。「美味しそうなんだけどちょっと嫌な感じがするな」とか。人の発言の中でも「あれ、今の言葉ちょっとひっかかったな」とか。「あの人の表情、あれ?どうしたんだろう」とか。対人でも対モノに対して、「あれ!?」って思う時みたいなものを、きちんと捉えることは、結構大事にしているかもしれないですね。
西塔 ファシリテーションの場だけでそれをやろうとしてもできないわけですね? 常に違和感を感じたり、視野を広く持っておくことを日頃からやって、鈍らせないようにしておくと。
黒井 ファシリテーターってその人の有り様が否が応でもめちゃくちゃ出るんですよね。日頃気にしてることや考えていること、人とのコミュニケーションの仕方や声のかけ方などが出ちゃうんです。ポジティブな人はポジティブな場をつくるし、深く思考したい人はそういった問いが出てくる。その人の思考がどんなに頑張っても隠しようもなく出てしまうので、自分自身のあり方を改めて見つめたり、自分の大事なこと、大事じゃないこと、気になること、違和感、自分の感覚に敏感であるということがとても大切になってくると思いますね。 でもね、結局最後は好きかどうかだと思う。ファシリテーターに関わらずだと思いますけど。私は仕事の中でワークショップデザインをする時間が1番好きなんですよ。1番ワクワクして1番好きなんですよね。だからやってるっていう感じですね。
西塔 スキルというより気質なんですよね。
黒井 まちづくりとか、地域活性、ソーシャルイノベーションとかありますけど、アプローチって人によって違うじゃないですか。「経済活性」という1つのゴールに対して、経営者、コンサルタント、ライター、その他いろんなアプローチがあるわけですけど、私はファシリテーターというアプローチが1番得意で1番好きだったので、仕方なくこれを選択しているというわけです(笑)。 本当は私の中では西塔さんのような経営者のアプローチに憧れるんですよ。経営者って新規事業を興して、人も雇って、お金も稼いで、地域にダイレクトで大きなインパクトを残すじゃないですか。それにめちゃくちゃ憧れて昔、頑張ったことがあるんですけど、どうにもこうにも向いてないんですよ。ワクワクもしなかったんです。で、私の中でのアプローチはどうしようなく「ファシリテーション」なんです。それはある意味のあきらめと共にあります。
西塔 これはまた最後の最後に意外な話ですね。
黒井 こうありたい、という憧れもあるかと思いますけど、どうしようもなくこれ、っていうものが、いろいろとチャレンジする中で自然と出てくるんだと思います。ただ、私のアドバイスとしては35歳くらいまではいろんなことをやってみた方が良いと思います。40過ぎたら否が応でも決まっちゃうので。「あ、結局ここか」って帰って来ちゃうから。35、36歳くらいまではいろいろ「あれはどうかな」「これはどうかな」ってチャレンジした方が良いと思います。
西塔 これからローカルキャリアを歩んでいく方たちにとって道しるべとなりそうなアドバイスですね。黒井さん、本日は本当にありがとうございました。